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鋼とステンレスについて

chigai

包丁の鋼とステンレス

「包丁を買ってみようと思うんだけど、材料が鋼のものとステンレスのものがある。一体どういう違いがあるの?」包丁のことをまだ良く知らない方からすると、なんとなく鉄よりステンレスの方が錆びにくそうだし、ステンレスの包丁を買ってしまおう、なんてふうに選んでしまうかもしれません。

 

もしくは、どちらも同じくらいの値段で、鋼とステンレスの包丁、どちらを買えば良いか分からない。なんてこともあるかと思います。

 

包丁は、一般的に鋼かステンレスで作られています。セラミック製の包丁は? と思うかもしれませんが、ここでは横に置いておきましょう。良い包丁、本格的な包丁を欲しいと思った時、なんとなく選ぶよりも鋼とステンレスの良さについて知っていた方が良いのは当然ですよね。
 
今回は、ちょっと小難しい鋼とステンレスについて説明いたします。

 

目次

  1. 鋼とステンレスを分けるもの
  2. 鋼の包丁の特徴
  3. 鋼とステンレスではどちらが良いのか

 

鋼とステンレスを分けるもの

鋼とステンレスは、どちらも同じ金属です。もっと言うと、どちらも同じように鋼という金属のカテゴリーに入っています。ですが、包丁に使う鋼材としての鋼とステンレスには複雑な違いがあるのです。ここではわかりやすく、炭素鋼とステンレスと呼びましょう。
 
鋼とステンレスについて説明をする前に、この二つの金属を分ける”あるもの”を知っておいてもらうと、より理解しやすくなります。あるものとは、炭素(C)、クロム(Cr)という二つの成分です。
 
炭素がなんなのか、クロムがなんなのかについては化学の話になるのでここでは詳しく触れません。ようするに、二つの成分がどれくらい入っているかによって、鋼とステンレスという違った金属になるのです。
 

包丁の鋼、炭素鋼について

包丁に使われる鋼というのは、純度100%の鉄ではありません。鋼と呼ばれるものは鉄を主成分とする金属の中に、炭素がおよそ0.02%から1.7%含まれているものを指します。
 
金属というのはおかしなもので、純度100%の鉄よりも不純物が入っている鋼の方が扱いやすいです。炭素が入っている鋼は、焼入れを行うことによって一気に硬度を上げることができるからです。
 
純度100%の金属を作るのはとても大変だということもありますが、多少不純物が混じっていた方がより強くしなやかな金属になるというのが、鋼の面白いところです。
 

SK材と安来鋼

一般に、包丁を作る時に使われるのは、JIS規格によって定められているSK材という炭素鋼です。炭素鋼というのは炭素が多く入っている鉄のことで、安い包丁ならこのSK材をそのまま使って包丁を作ります。
 
ただ、日本には日本刀を作る技術がありますよね。焼入れをすることで飛躍的に強度が上がるという日本刀の鋼を作る技術は、もちろん包丁にも使われています。
 
例えば、堺打刃物に使われている優れた包丁用の鋼は日立金属が作っています。安来鋼と呼ばれるもので、青紙、白紙、もしくは青鋼、白鋼などのシリーズ展開をしています。
 
シリーズの違いはグレードの違いで、本格的な包丁は大体これら青鋼、白鋼という鋼を使って作られています。単純に、安い鋼の包丁はSK材、高い鋼の包丁は青鋼か白鋼、と覚えておいても良いでしょう。
 

鋼の包丁の特徴

鋼とステンレスこうした鋼で作られた包丁は、非常に切れ味が良いです。しかし一方、含まれている炭素が錆びに弱いので、放っておくとすぐに錆びます。また、ステンレスの包丁よりも鋼の包丁の方が研ぎやすいという傾向があるので、包丁初心者の方からプロの料理人のような熟練者まで広く対応しています。
 

ステンレスについて

包丁を作る金属には、ステンレスもあります。このステンレスが炭素鋼と違うのは、クロムがたくさん入っているということです。
 
鉄を主成分とするのは炭素鋼と同じですが、ステンレスの場合は錆びにくい金属であるクロムが最低10%以上含まれています。錆びやすい成分の炭素の代わりに、錆びにくいクロムが入っているのでステンレスは錆びないのです。
 

包丁用のステンレス

ステンレスは錆びに強く、硬いので非常に便利な金属です。しかし、工業用のステンレスでそのまま包丁を作ると、硬すぎて砥石では研げない場合があります。
 
基本的に含まれている炭素の量がとても少ない合金ですので、炭素鋼のように焼入れをして硬度を上げる、なんてことができません。ステンレス製の包丁の多くは、金属をハンマーで叩いて鍛える鍛造ではなく、プレス機で圧力をかけて延ばす圧延という方法で作られてます。特に値段の安い包丁の場合は、圧延したステンレスを包丁の形に切り抜き、研いで刃をつけただけ、というものが多いです。
 
それではステンレスは鋼に劣っている金属なのかというと、そんなことは決してありません。包丁の世界も日進月歩で技術が進んでおり、先ほどもあげた日立金属では、ステンレスに少量の炭素を加え、包丁製作に向いているシリーズを生み出しています。パウダーハイス、V金10号と呼ばれる炭素鋼に勝るとも劣らない素晴らしいものも存在します。
 

ステンレスの包丁の特徴

鋼とステンレスステンレスで作られた包丁は、とにかく錆びにくいです。ただその一方で、炭素鋼に比べると研ぎにくく、切れ味が悪いです。
 
このステンレス包丁の弱点も、先ほど紹介した包丁向きのステンレスならある程度解消していますが、やはり炭素鋼にかなわない部分はあります。
 

鋼とステンレスではどちらが良いのか

ここまで、簡単に包丁に使われている鋼とステンレスについて説明してきました。しかし、一番気になるのは「どういう理由や基準で包丁を選べば良いのだろう」ということだと思います。包丁の選び方は色々とありますが、やはり大きなくくりで言うとどの材質で作られているか、ですよね。
 
鋼とステンレス、一体どちらの包丁が良いかと考えた時、はっきりとどちらが上だから絶対にこれを選ぶべき、とは言えません。どうしてかと言うと、炭素鋼の包丁にもステンレスの包丁にも、どちらにも優れているところがあるからです。
 
ですので、包丁が欲しいと思っている方が何を重視したいのかによって変わってきます。
 
鋼の包丁の良いところは、なんといっても切れ味です。研ぎやすいということは日常的にお手入れもしやすいということで、砥石もどれを選んでも問題ありません。しかし、錆びます。
 

ステンレスの包丁の良いところは、鋼とは比べ物にならない錆びにくさです。包丁用のステンレスには少量の炭素が入っているため、絶対に錆びないということはありません。しかし、鋼にくらべると研ぐのが大変で、切れ味も劣ります。
 
どんな包丁でもメンテナンスフリーとはいきませんので、必ず定期的に研いで手入れをする必要があります。鋼にしろステンレスにしろお手入れは必要ですので、切れ味を重視するか、錆びにくさを重視するかを基準にするのが良いでしょう。
 
価格的なことを言えば、予算が少ないなら鋼の包丁、予算が1万円ほどあるのならばどちらでもオーケーです。安いステンレスは研いでも刃がつかないことがありますので、とにかく安く包丁が欲しいという時は、安いSK材の包丁の方が良いです。
 
1万円ほど予算があれば、ステンレスの包丁でも包丁向きの金属を使っていることが多いので、鋼でもステンレスでも大きな問題は出てきません。ご自分の使い方に従って決めると良いでしょう。
 
包丁は料理をするための道具です。使いやすいと思う性質を持った包丁を選ぶのが一番です。