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包丁の工法

包丁の鋼材について

知っていると嬉しい包丁の工法
普段料理をするために包丁を使いこなしていても、その包丁がどんなふうに作られているのか気にすることってそんなにありませんよね。
それはある意味当然のことで、パソコンを使うことができてもパソコンの中身がどう違うのか分からなかったり、綺麗な液晶を生み出すための画期的な新技術がなんなのか知らなくても、テレビを見ることができるのと同じことです。

 
 
 
どちらにせよ、知らなくても困ることはない知識なのですが、知っているとなんだか嬉しい。人にさりげなく教えてみたり、自分が包丁を選ぶ時に正しい知識に基いて選ぶことができるようになって目利き気分。そんな、生活を潤してくれる包丁の工法という知識について、今回はご説明させていただきます。
 

目次

  1. 包丁の工法について
  2. 全鋼、本焼き包丁
  3. それ以外の工法

 

包丁の工法について

本格的な包丁の工法というのは、大きく分けると二つあります。一つは全鋼、または本焼きと呼ばれる作り方。もう一つは合わせ、または霞づくりと呼ばれる作り方です。どちらも鉄を叩いて鍛える鍛造という方法で作られます。
 
一体何の違いがあるのかと思うかもしれませんが、これが結構大きな違いを持っているのです。また、これら二つの包丁の工法以外にも、大量生産品の安い包丁の場合は、また別の方法で作られていることもあります。これも、工法といえば工法の一つです。
 
それでは早速、工法の違いについて確認してみましょう。
 

霞、合わせ包丁

包丁辞典日本刀や包丁の中で最も多く出回っているのは、この霞、合わせ包丁と呼ばれる工法です。基本的に二種類以上の金属を使って包丁を作る工法で、硬さの違う金属を合わせることにより、一種類の金属ですべて作ってしまうよりも刃毀れのしにくい扱いやすい包丁を作ることができます。
 
刃と刀身では使う金属が違うため、霞がかってみえることから霞と呼ばれます。
霞の中にも違いがあるので、それぞれ確認していきます。
 

鋼付け

和包丁の代表的な工法です。軟鉄と呼ばれる柔らかく衝撃に強い鉄と、刃の部分に使う鋼を貼りあわせて作ります。断面を見ると、鋼の上に軟鉄がのっている二層構造になっていると考えていただければ分かりやすいでしょう。もっと単純に、刃の平面側である裏は硬く刃がついている方、斜めに研いで刃がついている表は柔らかい金属でできている、と考えても良いです。
 

三枚合わせ

これは、両刃の合わせ包丁を作るときに使われる工法です。鋼付の場合は二層構造になる訳ですが、三枚合わせの場合は文字通り鉄板を三枚重ねた三層構造になります。両刃の切っ先となる硬い鋼を、硬さの違う金属で両側から挟み込むつくりです。
 
両側から同じように研いでいくと、ちょうど中心に挟んだ鋼部分がくるようになるため、この工法では片刃の包丁は作れません。
 

割り込み

割り込みという工法は、三枚合わせと同じように両刃の包丁を作るときに使われます。刀身を作る金属を広げ、そこに刃になる硬い金属を挟み込んで叩いて伸ばすのです。少しイメージがしにくい工法なので、わかりやすく言うとホットドッグのようになっています。
 
ウインナーが刃になる鋼、パンが軟鉄です。
 

合わせの魅力

合わせ包丁の良いところは、とにかく使い勝手が良いことです。構造上刃の鋭さと頑丈さのどちらも持っているので研ぎやすく、ちょっと落としたくらいでは折れたりしません。一度作った後に調整を加えたり、家庭的な用途で使うのにも向いています。とは言っても、本格的に作られた合わせ包丁は、かなりの切れ味を誇ります。
 
プロの料理人が使っていてもなんの問題もない優れた工法です。ただ、硬さの違う金属を重ねて作るという工法上、包丁によっては金属同士が引っ張り合い、徐々に包丁が歪んでしまうことがあります。ゆがみの少ない包丁を作ることができるかどうかは、職人の腕にかかっているという訳です。
 

全鋼、本焼き包丁

全鋼、本焼きという技法について紹介しましょう。ここまで紹介してきたのは合わせ包丁というもので、作り手側として作りやすく、使い手側として扱いやすい包丁でした。一方こちらの全鋼、本焼き包丁はさらに本格的な包丁の工法となります。
 
全鋼という言葉の通り、この工法では一種類の鋼しか使いません。切れ味を追求すると、硬い金属でないと鋭く研ぐことができないのですが、硬い金属はどうしてもしなやかさが無いので簡単に欠けたり折れたりしてしまう、という性質を持っています。
 
包丁の工法一種類の鋼を叩いて伸ばし、焼入れを行って硬度を上げ、包丁にする。工法としての手順としてはそれだけなのですが、とても難しい工法なのです。なにせ全体が一つの金属でできていますので、作っている最中に一箇所が欠けたらそれで終わりです。焼入れを行ってしまうと後から刃の歪みを直すこともできなくなるため、全鋼で包丁を作ることができる職人は、かなりの実力を要求されます。
 
合わせ包丁が多少ミスしても取り返しのきく工法なら、全鋼の包丁は完全一発勝負の工法ということです。
 
また、全鋼の包丁は上手に扱うのも難しい包丁です。刀身から刃まですべてが一種類の金属でできていますので、手が滑って落としてしまったりすると、あっけなく真っ二つに割れてしまったりします。また、全体の硬度が高いので研ぐのも難しいです。
 

全鋼の魅力

全鋼、本焼きの包丁は、全体が一つの鋼でできているので独特の切れ味は合わせ包丁と同等かそれ以上。非常に硬いので一度研ぐと刃が長持ちします。職人である料理人の中でも、全鋼の片刃包丁をきちんと扱うことができるのは熟練の人だけです。扱いが難しい代わりに、合わせ包丁とは違って刃の狂いはほとんどありません。
 

それ以外の工法

ここまで紹介したのは、鍛造と呼ばれる金属加工の中でも熟練と技術が必要になる包丁の工法です。ですが、その辺のお店を覗いてみると、そんな技術が使われているとは思えないくらいお求めやすい値段の包丁が並んでいますよね。
 
そうした包丁、つまり大量生産品はどのように作られているかと言いますと、多くの場合はプレスで作られています。鋼材のメーカーが刃物鋼と呼ばれる刃物用の鋼の板を作り、それを仕入れた刃物メーカーは、鋼の板を包丁の形にプレスで型抜きをし、できあがった包丁型の金属片に熱処理と研ぎを行うことによって刃をつけるのです。
 
使われる金属は単純な鋼やステンレスだったり、軟鉄と鋼を合わせてある利器材と呼ばれるものだったりします。
 
金属加工の方法として、グレードの高い方法から順に鍛造、圧延、鋳造とあるのですが、こうした大量生産品で使われる鋼材は圧延で作られた鋼を使います。鍛造には及ばないものの、鋳造より良い金属なので家庭用途では十分な包丁を作ることができています。
 
何本作っても同じ品質の包丁を作ることができる、というのがこの工法の良いところです。そうでなければ、包丁を買おうと思った人は本格的な鍛造の包丁を買い求めることしかできません。
 
現在ではこの工法の質も上がってきており、鍛造でないからと品質が劣るとはいえなくなっています。とはいえ、合わせ包丁や全鋼のように鍛造で作られる包丁には職人の腕がそのまま反映されるため、より良いもの、最高級品となるとやはり鍛造品の包丁の方が質は上になります。
 
見た目は同じような包丁であっても、その工法はずいぶんと違います。こうした違いを知識として知っていれば、いざ本格的な包丁が欲しいと思った時、迷わずにすみます。