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鱧の骨切包丁とは

honekiri

鱧(はも)という魚のことをご存知ですか? 関西、それも京都で良く食べられているうなぎに良く似た魚です。京料理が好きな方は、独特の見た目と食感を持つ鱧の骨切が好きな方も多いでしょう。鱧という捌くのが難しい魚をさばくための和包丁、鱧の骨切包丁についてご説明いたします。

目次

  1. 鱧(はも)の骨切包丁
  2. 鱧の骨切包丁の見た目
  3. 鱧の骨切包丁の特徴

 

鱧(はも)の骨切包丁

鱧の骨切包丁というのは、鱧という魚を身と骨ごと切るために使われる和包丁です。鱧と言われてもすぐにピンとくる方はそう多くないかもしれません。京都ではメジャーな食べ物ですが、それ以外の地域ではあまり食卓に上がらない魚ですので、知らない方はこの機会にぜひ鱧という魚、そして鱧を捌くための包丁について知識を深めてみてください。
 

京都の風物詩、鱧

そもそも鱧とはなんぞや、というところからお話をしたいと思います。鱧というのはウナギ目ハモ科、簡単に言うとうなぎやどじょうの仲間です。ですので、うなぎやどじょうのように、にょろっとした細長い体を持っています。
 
ただし、鋭いギザギザの歯とシャープな頭の形から、うなぎに比べると結構凶暴な顔つきをしているように見えます。鱧の名前の由来として、食む、つまり噛んでくるということから来ている、なんて説もあります。
 
身は白身、あっさりとしていながらタンパクな味わいがあり、長いものは2メートルを越し、とにかく強い生命力を持つのが特徴です。
 
鱧は、京料理に欠かせない京都の風物詩の一つとでも言うべき食材です。京都の一般的なスーパーでも普通に売っています。ただ、その他の地域では余り耳にしない食材で、どちらかと言うとかまぼこの材料として使われる方が多い魚でもあります。
 
では、どうして鱧は京都でだけメジャーな食べ物になったのでしょう。実は、冷蔵庫も自動車もない時代、新鮮な魚がなかなか食べられない内陸地にある京都で、鱧だけが新鮮なまま食べられた、ということが普及の始まりとなっています。
 
他の魚では漁場から京都へ運ぶ最中に鮮度が落ちてしまうところを、鱧だけは持ち前の生命力の強さで元気にピチピチ生きていたので、当時の京都の人々から大人気の食材になったのです。
 
ただ、鱧は生命力の強さもさることながらとても小骨が多く、骨そのものも非常に固いので、はっきり言うと食べにくい魚です。そのまま食べるとあちらこちらに骨が突き刺さり、大変な思いをしてしまいます。
 
そこで、鱧を食べやすいように調理する道具として鱧の骨切包丁と骨切という技術が生まれたのです。しかし、骨切をしてもまだ骨があるのには変わりないと、他の地域では流行りませんでした。
 

鱧の骨切包丁の見た目

鱧の骨切包丁鱧の骨切包丁には角型と丸型があり、それは切っ先の形の違いから来ています。基本的なフォルムとしては薄刃包丁に近く、非常に重量があって分厚く、そして刃の部分を広めに取ることで刃の角度を薄くし、切れ味を鋭くしています。
 
刃渡りは27センチから30センチほどと、和包丁の中でも大型の部類に入ります。イメージしやすいように言いますと、鱧の骨切包丁は出刃包丁と同じくらいの重さを持ちます。
 
鱧という魚は、上で言った通り非常に骨が固いので、通常の包丁で処理するのが大変です。包丁を大きく分厚く作ることで、包丁そのものの重さを使って骨を切ることができるようにしているという訳です。
 
同時に、身を捌き、さらに骨の切れ味を良くするために刃は鋭くしてあります。重さと鋭い刃、この二つを持ち合わせるのが鱧の骨切包丁です。
 

鱧の骨切包丁の特徴

鱧の骨切包丁は、つくりとは別に他の和包丁とは少し違う特徴を持っています。それが、鱧の骨切という技術であり、骨切包丁の扱い方なのです。
 
通常、和包丁というのは引き切りで使います。押し切りをすることもありますが、刺身を引く時に包丁のあごから刃先までを全て使って一息に食材を切る方法は、切れ味の良さを追及している和包丁ならではです。
 
しかし、鱧を捌く時は固い骨をどうにかしないといけません。そのため、鱧の骨切包丁は力を入れやすい押し切りで使用されています。
 

鱧の骨切技術は職人芸

鱧を盛んに食べる京都では、鱧の骨切という技術が伝わっています。鱧はそのままではとても食べにくいので、腹から捌いて身を開き、内蔵と骨、ヒレなどを取り除きます。その上で、取りきれない小骨と身を同時に細かく鱧の骨きり包丁で切り、食べやすくします。
 
切ると言っても、完全に切り離してミンチのようにしてしまう訳ではありません。開いた鱧の身側から等間隔で包丁を入れていき、職人になれば皮をほんの1ミリだけ残して、小骨と身を細かく切ってしまうのです。
 
鱧は体の構造上皮のギリギリのところまで骨があるため、こうした特殊な調理の仕方が使われます。
 
リズム良く骨と身を押し切っていく時のシャッ、シャッという小気味の良い音は、鱧の味が好きで食べに来たという方の耳を楽しませる一種のパフォーマンスとしても人気が高いです。
 
重く切れ味の良い鱧の骨切包丁を使い、薄皮一枚だけ残して小骨と身を切ってしまう。言うまでもなくとても難しい技術で、一寸(およそ3センチ)あたり24回から26回包丁を入れることができてやっと一人前と認められます。包丁の扱い方が悪ければ、勢い余ってはもの身を両断してしまったり、身と小骨が綺麗に切れておらず、食感が落ちてしまいます。
 
鱧の骨切だけで8年もの修行がいるというくらい、芸術的な職人芸の一つなのです。
 
骨切をした鱧は、そのままでは食べにくいので熱湯で湯通しをします。すると、切り込みをいれたところから一気に身が開き、その様子がまるで白い花が咲いていくように見えるので、食の見た目を重視する方にも人気のある食材です。
 
骨切りをして湯通しした鱧は、湯引きはもなどと呼ばれます。
 

鱧の骨切包丁はプロ御用達

鱧の骨切包丁よほど鱧が好き、もしくは小魚の多い魚を頻繁に捌くということでもない限り、家に鱧の骨切包丁があるということはまずありません。その理由として、鱧自体がメジャーな食材ではないのでそもそもほとんど食べないこと、鱧の骨切包丁はプロ御用達なのでそれ相応にお値段も上がってしまうことがあげられます。
 
そして何より、鱧の骨切包丁は研ぐのがとても大変です。鱧の骨切包丁は形が特殊な訳ではありません。一般的な和包丁を砥石で研ぐことができるのであれば、同じ感覚で研ぐことができます。
 
ただし、鱧の骨切包丁は出刃包丁並みかそれ以上に重く、そして薄刃包丁並みに刃の角度が浅いという難しさを持っていることを忘れてはいけません。
 
単純に考えて、重たい包丁は繊細に扱うのが難しいですよね。力がないと研いでいる最中に手元が狂ってしまうこともあります。鱧の骨切包丁は刃渡りも長くサイズが大きいので尚更です。
 
その上、包丁は刃の角度が深いものより刃が薄く角度が浅いものの方が研ぐのはより難しいのです。それが合わせの包丁よりも扱いの難しい高級な本焼きの鱧切り包丁だったりすると、奮発して購入した包丁なのに最初に研いだ時に欠けてしまった、なんて悲しい事態につながってしまいます。
 
それに鱧の固い骨を切るので、骨切包丁は大きさと重さの割には消耗が早い、という弱点もあります。重たくて研ぐのが難しい包丁だからこそ、料理人が芸術的な骨切りをすることができる。それが、プロでもなければお手入れし続けられない骨切包丁の気難しさなのです。
 
しかし、プロでなくても鱧の骨切りをしてみたい、自宅で鱧をたくさん捌いて食べたいという方は一本買い求めてみると良いでしょう。
 
鱧を食べない地域にお住まいならば、小さな刃物屋さんには鱧の骨切包丁が置いていないことが多いです。こういった特殊な包丁は、専門店まで足を伸ばすかネットで探すのが良いでしょう。