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ふぐ引き包丁とは

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日本料理と言えばお刺身です。数あるお刺身の中でも、旨みと見た目の華やかさは群を抜くふぐ刺し。日本には、そんなふぐを引くためだけに作られた包丁があります。ふぐ引き包丁の特徴やつくり、扱う時の注意点から意外と知らないふぐの豆知識まで、ご紹介します。

 

目次

  1. 高級食材、ふぐ専用包丁
  2. ふぐ引き包丁の特徴
  3. ふぐ引き包丁の種類
  4. ふぐ引き包丁のつくり

 

高級食材、ふぐ専用包丁

ふぐ引き包丁は、つくりも用途も特殊な日本の和包丁の一つです。非常に薄く、その分切れ味が良いことから、まさしくふぐの刺身をつくるためだけに使われます。
 
ふぐ引き包丁ふぐと言えば、日本の贅沢料理の一角を担う存在です。牛肉を毎日食べるという方はいても、ふぐを毎日食べるという方はそうはいないでしょう。ふぐが高級食材なのは、とにかくその身が美味しく、そして毒があるため捌くためには優れた技術と免許が必要だからです。
 
古来より、毒で死んでしまうと分かっていても食べる人が途切れなかったふぐ。そんなふぐの身を捌くための包丁について、ご説明いたします。
 

ふぐ引き包丁の特徴

ふぐ引き包丁の特徴は、刃渡りの長さと刀身の薄さです。見た目としては、柳刃包丁や刺身包丁に近いと言っても差し支えありません。刃の幅は狭く、強い反りのある刃先を持っています。
 
形こそ柳刃や刺身包丁とほぼ同じですが、違うのはその薄さです。関東のものと関西のものとで刃の厚みは少し変わってきますが、薄いものは3ミリ以下という驚異的な厚みしかありません。
 
ふぐ引き包丁が薄いのは、ひとえにふぐを薄く切るためです。分厚い包丁、例えば出刃包丁でふぐの刺身、お造りを作ることができるかと言うと、できないのです。魚を薄く捌くためには、包丁も薄くないといけません。
 
特に、皿の模様が透けて見える程の薄引きにする時は、包丁もしなるくらいの薄さと刃の鋭さを持つ必要があります。
 
頑丈さを度外視して切れ味と薄さだけを追い求めた結果が、ふぐ引き包丁なのです。
 

ふぐを捌くということ

意外と知らないふぐの豆知識をお教えしましょう。実は、ふぐというのは釣り上げた後すぐに食べられる魚ではありません。
 
ふぐの体というのは、言うなれば全身ムキムキのマッチョマンのようなものです。無駄な脂肪はほとんどなく、引き締まった高タンパクなふぐの身は、人間の顎ではかみ切れないほどの固さ、弾力を持っています。
 
そのため、通常ふぐは旨みを引き出すため、そして食べやすいように一日寝かせるのですが、それでもぶりの刺身のように厚く切ると固くて噛み切れないのです。
 
固いふぐの身を食べるには、できるだけ薄く身を引く必要があります。同時に、その包丁の切れ味が良くないとふぐを捌くことができません。ふぐを捌くなら柳刃包丁や刺身包丁で十分ではないか、と思うかもしれませんが、ふぐ引き包丁が極端なつくりをしているのはこんな理由があるからです。

 

ふぐ引き包丁の種類

ふぐ引き包丁には、やや幅が広く刀身が厚めのものと一際薄く細いものと二種類あります。どちらもふぐ引き包丁なのですが、この違いは関東と関西のふぐに対する意識の違いから生まれています。
 
関東では、ふぐ刺しはとにかく薄く引くのが一番だと考えます。美しい和食器と透けるように薄いふぐ刺しのコンビネーションは、見た目が非常に良いですよね。
 
一方で、関西ではふぐのような高級魚を薄く引くなんてケチくさい、厚みがある方が美味いのだから、豪快にいってしまえ、と身を厚めに切ります。
 
どちらが優れているということはなく、ふぐ刺しの見た目を重視するのか、それとも歯ごたえや満足感を重視するのか、という差による違いです。
 

ふぐ引き包丁のサイズ

ふぐ引き包丁ふぐ引き包丁は、全て同じサイズで作られている訳ではありません。
 
刃渡りの短いものは18センチほど、長いものになると刃渡り36センチのものもあります。刃渡りが長ければ長いほど一息でふぐを引けるのですが、流石に36センチのものは取り回しが悪いので、一般的には27センチくらいのものが人気です。
 

ふぐ引き包丁の注意点

ふぐ引き包丁は、とにかくふぐの身を薄く引く、ということだけを考えて作られた包丁です。ですので、それ以外の用途には全く向いていません。肉や他の魚、野菜も切れなくはないですが、できることなら避けた方が良いです。
 
ふぐ引き包丁の特徴的な薄刃は切れ味が良い一方、使っている鋼の量が少ないということでもありますので、非常にもろいのです。固い床に落としたり、出来心で魚を骨ごと捌いたりすると、簡単に刃が欠けてしまいます。
 
また、片刃の包丁の宿命とも言えるのですが、ふぐ引き包丁はとても薄いので刀身が曲がりやすいです。本焼きのふぐ引きならば多少はマシですが、合わせ包丁のふぐ引きでは鋼の硬さの違いから、長い間使っていると徐々に包丁が曲がってきます。
 
さらに言いますと、刃が薄いということは、研ぐのが難しいということでもあります。薄刃の包丁というのは、研いでいる最中にちょっと角度が変わっただけですぐに刃がつかなくなってしまいます。刃渡りが長いので、刃線を綺麗に整えるのも一苦労です。
 
ふぐ引き包丁の日常的なお手入れの大変さはかなりのものです。
 

ふぐ引き包丁のつくり

本格的な和包丁のつくり方は、全鋼と合わせの2通りあります。全鋼とは何か、合わせとは何か、そしてふぐ引き包丁ではどんな違いがあるのでしょうか。
 

全鋼

本焼きとも呼びます。そのまま、刃の部分全てが鋼で作られている包丁のことです。1種類の固い鋼だけでつくるため、全鋼の包丁はつくるのが非常に難しく、扱い方を知らないとぽっきり二つに折れてしまうことさえあります。
 
その代わり刃をつけると非常に長持ちしますし、刃全部が一つの金属でできていますので片刃特有の反りも起こりにくく、技術のある料理人が使えば鋼の良いところを遺憾なく発揮してくれます。
 

合わせ

霞とも呼ばれます。こちらは全鋼とは違い、柔らかい軟鉄と呼ばれる鉄をベースに、刃の部分だけ固い鋼を使う、という構造になっています。固いだけの包丁は割れやすく、柔らかすぎる包丁は切れません。そこで、柔らかい鉄と固い鋼を両方使って、切れ味の良さと丈夫さを両立させようという手法です。
 
全鋼に比べるとつくるのが簡単ですので、お値段も手頃ですし頑丈ですので初心者でも扱いやすいです。ただ、全鋼の包丁よりは刃が長持ちしませんし、硬さの異なる金属を使っているので、ものによっては少しずつ反ってきます。こまめなお手入れは必須です。
 

全鋼のふぐ引き包丁

全鋼というのは、包丁の中でも最高級なものだと思って下さい。ふぐ引き包丁はただでさえ非常に薄く、そして鋭く作らなければならないため、高価です。そこにつくるのも大変な全鋼と来ると、一本10万円を軽く越える値段になります。高級な鋼を使うとさらに数倍、と恐ろしい値段です。
 
ふぐ引き包丁は、身の固いふぐを捌くこと、刀身が薄いことから消耗が早い包丁です。しかし全鋼のふぐ引き包丁ならば切れ味が落ちにくいため、毎日のお手入れは非常に楽になります。本物の料理人、職人だけが使うことのできる、プロの道具と言えます。
 

合わせのふぐ引き包丁

合わせのふぐ引き包丁が良くないのかと言うと、そんなことはありません。むしろ、全鋼のふぐ引き包丁をきちんと扱うことができるのは長年修行を積んだ凄い職人さんだけですので、需要としては合わせの方が上です。
 
全鋼のものと比べると安価なので、安いものは一本2万円ほどから手に入ります。ただ、合わせのふぐ引き包丁でもつくりの良いしっかりとしたものは、10万円を越えます。固く、扱いにくいが最高級の全鋼を選ぶか、使いやすく安価な代わりに切れ味が持続しにくい合わせを選ぶかは、料理人としての腕と予算に掛かっているという訳です。